評価制度と連動させない「称賛」こそが、チームの結束を強める理由
「称賛したのに、なぜチームがギクシャクするのか」
「部下を褒めるように心がけているのに、なぜかチームの雰囲気が良くならない」
こんな悩みを抱えていませんか?
会社の評価制度に則り、目標を達成した部下を褒める。表彰制度を設けて、優秀な社員を称える。一見すると「称賛」を大切にしている組織に見えます。
しかし、こうした取り組みを続けているにもかかわらず、チームのエンゲージメントは上がらず、離職率も改善しない。むしろ、メンバー同士の関係がギクシャクしているように感じる。
その原因は、称賛が評価制度と連動していることにあるかもしれません。
評価と結びついた称賛は、純粋な「認め合い」ではなく、「査定」になってしまうのです。そして、この「査定としての称賛」が、チームの心理的安全性を静かに蝕んでいきます。
あなたの組織でも、こんなことが起きていませんか?
「今月のMVPに選ばれたAさん、おめでとう!」
表彰されたAさんは嬉しそうに笑顔を見せます。しかし、周囲のメンバーの表情はどうでしょうか。
「また Aさんか」「結局、数字を出した人が評価されるんだよね」「自分の頑張りは見えないところで消えていくんだな」
評価制度と連動した称賛は、勝者と敗者を生み出します。称賛を受けた人は嬉しいかもしれませんが、受けられなかった人には「自分は認められていない」というメッセージとして伝わってしまうのです。
さらに問題なのは、称賛が「競争」を生み出してしまうことです。
「Bさんに負けないように頑張らないと」「Cさんより先に成果を出さないと」
本来、チームメンバーは「仲間」であるはずです。しかし、評価と連動した称賛は、仲間を「競争相手」に変えてしまいます。これでは組織風土が良くなるはずがありません。
あなたも、チームの中で「協力」よりも「競争」の空気を感じたことはありませんか?
それは、称賛のあり方に原因があるのかもしれません。
評価と切り離した「純粋な称賛」がチームを変える
この記事では、評価制度と連動させない「純粋な称賛」がなぜチームの結束を強めるのか、そのメカニズムを解説します。
心理的安全性を高め、エンゲージメントを向上させ、離職率を下げる。そんな組織風土を作るための「称賛」の実践方法をお伝えします。
評価とは別の軸で「認め合う」文化を作ることで、チームは驚くほど変わります。
評価と切り離した純粋な称賛
なぜ評価と連動した称賛は逆効果になるのか
「内発的動機」を「外発的動機」に置き換えてしまう
人が仕事にやりがいを感じる理由は様々です。「お客様の役に立てた」「難しい課題を解決できた」「チームで協力して成果を出せた」。
これらは内発的動機と呼ばれるもので、仕事そのものから生まれる喜びです。
しかし、称賛が評価や報酬と結びつくと、「認められるために」「評価されるために」という外発的動機が強くなっていきます。
心理学の研究では、外発的動機が強調されると、内発的動機が弱まることが知られています(アンダーマイニング効果)。
つまり、「評価されるための行動」が増え、「本当にやりがいを感じる行動」が減ってしまうのです。これはエンゲージメントの低下につながります。
「見える成果」だけが称賛され、「見えない貢献」が無視される
評価制度と連動した称賛は、どうしても「測定可能な成果」に偏りがちです。
売上、達成率、KPI。数字で示せる成果は称賛されやすい一方で、数字に表れない貢献は見過ごされてしまいます。
- チームの雰囲気を明るくしてくれる人
- 困っている同僚をさりげなくサポートする人
- 地道な業務改善を続けている人
- 新人の相談役になってくれる人
こうした「見えない貢献」をする人たちは、評価制度の中では称賛されにくいのです。
しかし、チームの組織風土を作っているのは、まさにこうした「見えない貢献」の積み重ねです。これを認めないことは、チームの土台を無視することと同じです。
「心理的安全性」が損なわれる
評価と連動した称賛は、「失敗を隠したい」という心理を生み出します。
「失敗したら評価が下がる」「称賛されないどころか、マイナス評価になる」
こうした環境では、チャレンジすることがリスクになります。新しいアイデアを試すことを避け、無難な行動を選ぶようになります。
これは心理的安全性が低い状態です。
Googleの研究(プロジェクト・アリストテレス)では、チームのパフォーマンスを決める最も重要な要素は「心理的安全性」であることが明らかになっています。
評価と連動した称賛は、短期的には成果を上げるかもしれませんが、長期的にはチームの心理的安全性を損ない、イノベーションを阻害してしまうのです。
「純粋な称賛」が持つ3つの力
力1:「存在承認」としての称賛
評価と切り離された称賛は、**「あなたがいてくれることに価値がある」**というメッセージになります。
これは「存在承認」と呼ばれるもので、人間の根源的な欲求に応えるものです。
「成果を出したから認める」のではなく、「あなたという人を認める」。
この違いは大きいのです。
存在承認を受けた人は、「自分はこのチームに必要とされている」と感じます。この感覚が、エンゲージメントの源泉になります。
力2:「安心感」を生み出す
評価と連動しない称賛は、「失敗しても大丈夫」という安心感を生み出します。
「成果を出さなくても、自分の頑張りを見てもらえる」「結果がうまくいかなくても、プロセスを認めてもらえる」
この安心感が、心理的安全性を高めます。
心理的安全性が高い環境では、メンバーは恐れなくチャレンジできます。失敗を恐れず、新しいアイデアを試せます。そして、困った時には素直に助けを求められます。
これが、チームの結束力を高める基盤になるのです。
力3:「循環」が生まれる
純粋な称賛は、循環します。
称賛を受けた人は、自然と他の人を称賛するようになります。「自分がしてもらったことを、他の人にもしたい」という気持ちが生まれるからです。
評価と連動した称賛では、この循環は生まれません。なぜなら、「限られたパイ」を奪い合う競争だからです。
しかし、評価と切り離された純粋な称賛は、無限に増やせます。称賛すればするほど、チーム全体の称賛の総量が増えていく。
この「称賛の循環」が、組織風土を根本から変えていきます。
評価と連動させない「称賛」の実践方法
方法1:日常の小さな「ありがとう」を大切にする
称賛は、大げさなものである必要はありません。
「資料作成、ありがとう。わかりやすかったよ」「会議の準備、助かったよ」「いつも丁寧に対応してくれて、ありがとう」
こうした日常の小さな「ありがとう」が、純粋な称賛の基本です。
ポイントは、具体的に伝えること。「ありがとう」だけでなく、「何に対して」感謝しているのかを添えることで、相手は「自分の行動が見られている」と感じられます。
方法2:「プロセス」を称賛する
結果だけでなく、プロセスを称賛しましょう。
「新しいアプローチを試してみたんだね。その挑戦する姿勢がいいね」「粘り強く取り組んでいたね。その努力を見ていたよ」「難しい状況でも諦めなかったね。それがチームの力になっているよ」
結果がうまくいかなかった時でも、プロセスを称賛することで、「チャレンジすること自体が価値がある」というメッセージを伝えられます。
これは心理的安全性を高める上で非常に重要です。
方法3:「見えない貢献」を見つけて伝える
評価制度では認められにくい「見えない貢献」を、意識的に見つけて称賛しましょう。
- 「いつもチームの雰囲気を明るくしてくれてありがとう」
- 「新人の相談に乗ってくれているの、知っているよ。ありがとう」
- 「会議の後片付け、いつもしてくれているよね。感謝しているよ」
- 「誰かが困っている時、さりげなく声をかけてくれているね。素晴らしいと思う」
こうした「見えない貢献」を言葉にして伝えることで、「自分の存在価値」を感じてもらえます。
方法4:「称賛の仕組み」を作る
個人の心がけだけでは、称賛文化は定着しません。仕組み化することが重要です。
具体的な方法としては:
- 称賛チャンネル:チャットツールに「称賛専用」のチャンネルを作り、気づいた時にすぐ投稿できるようにする
- サンクスカード:物理的またはデジタルのカードで感謝を伝え合う
- 称賛タイム:ミーティングの冒頭5分で、お互いの良かった点を伝え合う時間を設ける
こうした仕組みを導入することで、称賛が組織風土として根付いていきます。
Seediaのようなピアボーナスサービスを活用すれば、評価制度とは別の軸で、メンバー同士が日常的に称賛を送り合う文化を作ることができます。評価者である上司からの称賛だけでなく、同僚同士の「純粋な称賛」が自然と生まれる環境を整えられるのが特徴です。
評価と連動させない称賛の実践方法
称賛文化がもたらす「離職率低下」のメカニズム
「承認欲求」が満たされることの重要性
人間には「認められたい」という根源的な欲求があります。マズローの欲求5段階説でいう「承認欲求」です。
この承認欲求が満たされないと、人は「この場所にいる意味がない」と感じ始めます。そして、自分を認めてくれる場所を求めて、転職を考えるようになります。
逆に、日常的に称賛を受けて承認欲求が満たされている人は、「この組織にいたい」「このチームのために頑張りたい」と感じます。
これが、離職率低下につながるメカニズムです。
「帰属意識」が高まる
純粋な称賛は、「このチームの一員である」という帰属意識を高めます。
「自分はこのチームに貢献できている」「仲間から認められている」「ここに自分の居場所がある」
こうした感覚を持つ人は、簡単には組織を離れません。給与や待遇だけでなく、「居場所」としての価値を感じているからです。
「エンゲージメント」が持続する
評価と連動した称賛によるモチベーションは、一時的なものになりがちです。表彰されたその時は嬉しくても、すぐに次の評価サイクルへのプレッシャーに変わります。
一方、純粋な称賛によるエンゲージメントは、持続します。
「今日も認めてもらえた」「小さな貢献でも見てもらえている」
日常的に承認欲求が満たされることで、エンゲージメントが安定して高い状態を保てるのです。
こんな方に、ぜひ実践していただきたい
- 評価制度はあるのに、チームのエンゲージメントが上がらないと感じている方
- メンバー同士の協力関係が薄く、競争的な雰囲気を感じている方
- 離職率が高く、特に「理由がよくわからない退職」が多い方
- 心理的安全性の高いチームを作りたいと考えている方
- 組織風土を根本から変えたいと考えているリーダーの方
評価制度と切り離した「純粋な称賛」は、今日からすぐに始められます。
大がかりな制度変更は必要ありません。まずは、あなた自身が「日常の小さなありがとう」を伝えることから始めてみてください。
まとめ:「純粋な称賛」がチームの結束を強める
まとめ:純粋な称賛がチームの結束を強める
評価制度と連動した称賛は、一見すると「認める文化」を作っているように見えます。しかし、その実態は「査定」であり、チームに競争を生み出し、心理的安全性を損なってしまいます。
本当にチームの結束を強めるのは、評価と切り離された「純粋な称賛」です。
- 内発的動機を損なわない
- 見えない貢献も認められる
- 心理的安全性が高まる
- 称賛が循環し、組織風土が変わる
そして、その結果としてエンゲージメントが向上し、離職率が下がる。
称賛は、評価のためのツールではありません。「あなたを認めている」というメッセージを伝える手段です。
今日から、評価とは関係なく、純粋に「ありがとう」「素晴らしいね」を伝えてみてください。
その小さな一言が、チームの結束を強める大きな力になります。
あなたのチームに、純粋な称賛が溢れる組織風土が生まれることを願っています。