離職率が高いIT企業の共通点|給与ではなく「孤独」が原因かもしれない

心理的安全性称賛エンゲージメント離職率組織風土

離職率が高いIT企業の共通点離職率が高いIT企業の共通点

「条件は良いのに、なぜか人が辞めていく」

あるIT企業の人事担当者から聞いた話です。

「うちは給与も業界平均以上だし、リモートワークも柔軟にできる。福利厚生も充実させている。なのに、離職率が下がらないんです」

エンジニアの採用市場は売り手市場が続いています。せっかく採用した優秀な人材が、1年、2年で辞めていく。引き留めようとしても、「特に不満はないんですけど…」という曖昧な理由で去っていく。

この状況に心当たりはありませんか?

実は、離職率が高いIT企業には、ある共通点があります。それは、給与や待遇の問題ではなく、「職場の孤独」という見えにくい課題です。

数字には表れない「孤独」という離職要因

「孤独が離職の原因?大げさでは?」

そう思われるかもしれません。しかし、データは明確な傾向を示しています。

米国の調査会社ギャラップの研究によると、「職場に親しい友人がいる」と答えた従業員は、そうでない従業員に比べてエンゲージメントが7倍高いという結果が出ています。

また、ハーバード・ビジネス・レビューの調査では、孤独を感じている従業員は、パフォーマンスが低下し、離職意向が高まることが報告されています。

IT業界は特にこの問題が深刻です。

  • リモートワークの普及で、物理的な接点が減少
  • 専門性の高い業務で、他者と協働する機会が限られる
  • 非同期コミュニケーション(Slack、メール)中心で、雑談の機会がない
  • プロジェクトベースの働き方で、チームの一体感が生まれにくい

表面上は「働きやすい環境」が整っているように見えても、人と人とのつながりが希薄になっている。これが、IT企業の離職率を押し上げている隠れた要因なのです。

なぜ「孤独」がこれほど影響するのか

孤独が離職につながるメカニズム孤独が離職につながるメカニズム

人間は社会的な生き物です。これは、進化心理学の観点からも明らかになっています。

原始時代、集団から孤立することは死を意味しました。そのため、私たちの脳は「つながりの欠如」を危険信号として認識するようにできています。孤独を感じると、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、心身にネガティブな影響を与えます。

孤独が引き起こす悪循環

1. 心理的安全性の低下

孤独を感じている人は、「自分の意見を言っても受け入れられないのではないか」という不安を抱きやすくなります。結果として、会議で発言しない、質問をしない、助けを求めない——という行動パターンに陥ります。

心理的安全性が低い状態では、ミスを隠す、問題を報告しないといった行動も増え、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。

2. エンゲージメントの低下

「自分はこのチームに必要とされている」という感覚がなければ、仕事への情熱は生まれません。孤独を感じている従業員は、業務を「こなすだけ」の状態になりがちです。

エンゲージメントが低い状態が続くと、「ここにいる意味がわからない」という感覚が強まり、離職への道を歩み始めます。

3. 帰属意識の消失

「この会社の一員である」という帰属意識は、日々の小さなつながりの積み重ねで育まれます。誰かと雑談をする。ランチを一緒に食べる。プロジェクトの成功を一緒に喜ぶ。

こうした機会が失われると、**会社はただの「給与をもらう場所」**になってしまいます。より良い条件の会社があれば、躊躇なく転職を選ぶでしょう。

離職率を下げるために今すぐできる5つのこと

では、「職場の孤独」にどう対処すればよいのでしょうか。組織風土を変え、心理的安全性を高めるための具体的な施策をご紹介します。

孤独を解消する5つの施策孤独を解消する5つの施策

施策1:「雑談」を意図的に設計する

リモートワーク環境では、意識的に雑談の機会を作らなければ、業務連絡以外のコミュニケーションはほぼゼロになります。

具体的なアクション:

  • 週に1回、15分の「コーヒーチャット」をカレンダーに入れる
  • 会議の冒頭5分を「チェックイン」(今の気分や週末の出来事を共有)に充てる
  • Slackに「#random」「#雑談」チャンネルを作り、業務外の話題を推奨する

重要なのは、これを「サボり」ではなく「仕事の一部」として位置づけることです。

施策2:称賛を日常に組み込む

「ありがとう」「助かった」「さすがだね」——こうした小さな称賛の言葉が、人と人とのつながりを生みます。

しかし、リモート環境では称賛の機会が激減します。オフィスなら自然に生まれた「今の対応、良かったね」という一言が、画面越しでは言いにくい。

具体的なアクション:

  • 週次ミーティングに「今週のありがとう」コーナーを設ける
  • 称賛を可視化するツールを導入する
  • マネージャーが率先して、具体的な称賛を行う

称賛は、評価や査定とは切り離すことが重要です。ランキング化したり、人事評価に反映させたりすると、称賛の本来の価値が失われてしまいます。

施策3:小さなチームを作る

人は、大きな組織全体には帰属意識を感じにくいものです。しかし、5〜7人程度の小さなチームには、強い一体感を持つことができます。

具体的なアクション:

  • 大規模プロジェクトも、小さなスクワッドに分割する
  • チーム内で定期的な1on1やレトロスペクティブを実施する
  • チーム独自の文化(Slackスタンプ、内輪のジョークなど)を許容する

「自分はこのチームの一員だ」という感覚が、孤独を和らげます。

施策4:メンター・バディ制度を導入する

特に新入社員や中途入社者は、孤独を感じやすい立場にあります。入社直後の孤立感が、早期離職の大きな要因になっています。

具体的なアクション:

  • 入社時に「バディ」(業務以外の相談相手)をアサインする
  • 月に1回、バディとの面談を必須にする
  • バディ自身にも「バディを務めることの意義」を伝える

「困ったときに頼れる人がいる」という安心感は、心理的安全性の土台になります。

施策5:成功と失敗を「一緒に」振り返る

プロジェクトの成功も失敗も、個人のものではなくチームのものとして扱う。この姿勢が、孤独感を減らします。

具体的なアクション:

  • プロジェクト完了時に、必ずチームで振り返りを行う
  • 成功は全員で祝う(リモートでも、画面越しの乾杯やバーチャル打ち上げ)
  • 失敗は「誰のせいか」ではなく「何を学べるか」にフォーカスする

「一緒に乗り越えた」という経験が、チームの絆を強くします。


こうした取り組みを継続的に行うには、仕組み化が重要です。Seediaのような称賛・感謝を可視化するツールを活用することで、日常の中に自然とつながりを生む仕掛けを作ることができます。


こんな組織に特におすすめです

職場の孤独への対策は、以下のような課題を感じている組織に特に効果的です。

  • リモートワーク導入後、チームの一体感が薄れたと感じている
  • エンジニアの離職率が高く、原因がわからない
  • 1on1で「特に困っていることはない」と言われるが、何か引っかかる
  • エンゲージメント調査のスコアが低迷している
  • 新入社員・中途入社者の早期離職が課題になっている

もし心当たりがあれば、まずはチームメンバーとの雑談の機会を1つ増やすことから始めてみてください。小さな変化が、大きな違いを生むことがあります。

まとめ:離職を防ぐカギは「つながり」にある

まとめ:孤独から絆へまとめ:孤独から絆へ

離職率が高いIT企業の共通点は、「条件」ではなく「つながり」の欠如にあります。

給与を上げても、福利厚生を充実させても、リモートワークを導入しても——人と人とのつながりがなければ、人は離れていきます。

今日から始められること:

  1. 雑談を意図的に設計する——業務外のコミュニケーションの場を作る
  2. 称賛を日常に組み込む——「ありがとう」を言葉にする文化を育てる
  3. 小さなチームを作る——帰属意識を感じられる単位で仕事をする
  4. メンター・バディ制度を導入する——「頼れる人がいる」安心感を提供する
  5. 成功と失敗を一緒に振り返る——「一緒に乗り越えた」経験を積み重ねる

心理的安全性の高い組織風土は、一朝一夕には作れません。しかし、毎日の小さな「つながり」の積み重ねが、エンゲージメントを高め、離職率を下げ、強いチームを育てます。

あなたの組織では、メンバー同士のつながりは十分ですか?

今日、誰かと雑談をしましたか? 誰かに「ありがとう」を伝えましたか?

孤独は、見えにくいけれど、確実に組織を蝕みます。

逆に言えば、つながりを意識的に育てることで、組織は大きく変わる可能性を秘めています。

まずは今日、隣の席の人(あるいはSlackの向こうの人)に、一言声をかけることから始めてみませんか?

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